「No.1表示」の留意点

「No.1表示」の留意点

近年、「利用者満足度第1位」「売上No.1」などを冠したテレビCMや広告をよく見かけるようになりました。事業者にとっては、自社の商品やサービスと他社のサービスとを差別化する方法として有用であり、ユーザーにとっても、商品やサービスを比較検討するうえで、重要な情報となりうるものでしょう。

しかし、この表示手法は、誤った使い方をすれば、一般消費者に誤認を与えることになりかねず、実際、いくつかの行政処分事例が公表されています。安易に用いることには、法令違反(景品表示法違反)のリスクがあるのです。

今回は、「No.1表示」の適切な使用についてご説明します。

1.「No.1表示」とは

「No.1表示」については、当局よりガイドラインが出されているわけではありませんが、公正取引委員会が2008年に公表した「No.1表示に関する実態調査報告書」(以下「報告書」)の中に、表示の考え方が示されており、これがガイドラインに代わるものとして、広く参照されています。

この報告書では、No.1表示の定義を『事業者が自ら供給する商品等について,他の競争事業者との比較において優良性・有利性を示すために「No.1」「第1位」「トップ」「日本一」などと表示するもの』としています。(報告書 1ページ 第1)

「No.1表示」は、一般消費者にとって商品やサービスを選択するに際しての有益な情報と考えられますが、他方、「No.1表示」は「数値指標」であるので、その客観性・正確性が特に重要であり、それを欠く場合には一般消費者の適正な商品等の選択を阻害するおそれがある、という側面もあります。(報告書6ページ 第4の1)

2.適正な「No.1表示」の要件

 

 「No.1表示」が不当表示とならないようにするためには、

要件① 「No.1表示」の内容が客観的な調査に基づいていること

要件② 調査結果を正確かつ適正に引用していること 

という2つの要件をいずれも満たす必要があります。(報告書7ページ 第4の3)

要件① 客観的な調査

 客観的な調査というためには、次の(ⅰ)(ⅱ)のいずれかを満たす必要があります。

(ⅰ)当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること

(ⅱ)社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されていること

要件② 調査結果の正確かつ適正な引用

 ①の「客観的な調査」を実施していても、特に、以下の事項について、事実と異なる、あるいは不明瞭な表示をする場合は、実際の表示と根拠となる調査結果との間に乖離が生じ、これにより一般消費者に誤認が生じれば、景品表示法上問題となります。

(ⅰ)商品等の範囲

(ⅱ)地理的範囲

(ⅲ)調査期間・調査時点

(ⅳ)調査の出典

3.行政処分がされた事例の検証

 

それでは、実際の処分事例において、何が問題となったのかを見てみましょう。

①平成19年3月29日タマホーム株式会社に対する排除命令

タマホーム株式会社は、新聞折り込みチラシや、06年10月9日から同年12月7日までの間に放送したテレビコマーシャルで、「注文住宅着工棟数2年連続日本一」との広告を行いましたが、実際には営業地域が限定された住宅建築業者の中での第1位にすぎませんでした。要件2(ⅱ)地理的範囲について、事実と異なる表示を行ったため、排除命令がされました。

②令和5年1月12日株式会社バンザンに対する措置命令

 株式会社バンザンは、自社が提供するオンライン個別学習指導に関するサービスの広告に、「オンライン個別学習指導で利用者満足度No.1」「第1位 オンライン家庭教師 利用者満足度」等の表示をしましたが、実際の調査は、回答者が広告されたサービスを利用していたユーザーであるかどうかの確認がされておらず、同社のサービスや他社の同種サービスを実際に利用したユーザーの満足度を、客観的な調査方法で調査したものではありませんでした。要件1の客観的調査が行われていなかったものとして、措置命令がされました。

4.おわりに~『イメージ調査』に注意!

  「No.1表示」は、適切に行えば、事業者、ユーザーともにメリットのある優れた表示方法です。しかし、No.1や第1位などと表記する客観的かつ十分な根拠を持たない表示は、ユーザーに誤認を与えるものであり、許されるものではありません。 

株式会社バンザンに対する措置命令の対象となった「顧客満足度」に関する調査は、実際にサービスを利用したユーザーの他社サービスと比較した「顧客満足度」ではなく、満足度が「高そうな」サービスはどれか、という「イメージ」を問う調査であった、と認定されています。近時の消費者庁の措置命令では、株式会社バンザンのほか、令和4年6月15日の株式会社PMKメディカルラボに対する措置命令においても、豊胸施術および痩身施術の「施術満足度第1位」という表示の根拠となる調査が、会社の「イメージ」を問うだけの調査(しかも回答者の75%が男性)であったことを、客観的な調査とはいえないと認定しています。顧客満足度を測るのにイメージの調査を根拠とするのは、明らかに不適当ですが、他方、「最もイメージのよいサービスはどれか」という調査自体にも、根拠とするに足る客観性は認めにくいかもしれません。イメージ調査という手法には、注意が必要でしょう。

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