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「No.1表示」の留意点

近年、「利用者満足度第1位」「売上No.1」などを冠したテレビCMや広告をよく見かけるようになりました。事業者にとっては、自社の商品やサービスと他社のサービスとを差別化する方法として有用であり、ユーザーにとっても、商品やサービスを比較検討するうえで、重要な情報となりうるものでしょう。

しかし、この表示手法は、誤った使い方をすれば、一般消費者に誤認を与えることになりかねず、実際、いくつかの行政処分事例が公表されています。安易に用いることには、法令違反(景品表示法違反)のリスクがあるのです。

今回は、「No.1表示」の適切な使用についてご説明します。

1.「No.1表示」とは

「No.1表示」については、当局よりガイドラインが出されているわけではありませんが、公正取引委員会が2008年に公表した「No.1表示に関する実態調査報告書」(以下「報告書」)の中に、表示の考え方が示されており、これがガイドラインに代わるものとして、広く参照されています。

この報告書では、No.1表示の定義を『事業者が自ら供給する商品等について,他の競争事業者との比較において優良性・有利性を示すために「No.1」「第1位」「トップ」「日本一」などと表示するもの』としています。(報告書 1ページ 第1)

「No.1表示」は、一般消費者にとって商品やサービスを選択するに際しての有益な情報と考えられますが、他方、「No.1表示」は「数値指標」であるので、その客観性・正確性が特に重要であり、それを欠く場合には一般消費者の適正な商品等の選択を阻害するおそれがある、という側面もあります。(報告書6ページ 第4の1)

2.適正な「No.1表示」の要件

 

 「No.1表示」が不当表示とならないようにするためには、

要件① 「No.1表示」の内容が客観的な調査に基づいていること

要件② 調査結果を正確かつ適正に引用していること 

という2つの要件をいずれも満たす必要があります。(報告書7ページ 第4の3)

要件① 客観的な調査

 客観的な調査というためには、次の(ⅰ)(ⅱ)のいずれかを満たす必要があります。

(ⅰ)当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること

(ⅱ)社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されていること

要件② 調査結果の正確かつ適正な引用

 ①の「客観的な調査」を実施していても、特に、以下の事項について、事実と異なる、あるいは不明瞭な表示をする場合は、実際の表示と根拠となる調査結果との間に乖離が生じ、これにより一般消費者に誤認が生じれば、景品表示法上問題となります。

(ⅰ)商品等の範囲

(ⅱ)地理的範囲

(ⅲ)調査期間・調査時点

(ⅳ)調査の出典

3.行政処分がされた事例の検証

 

それでは、実際の処分事例において、何が問題となったのかを見てみましょう。

①平成19年3月29日タマホーム株式会社に対する排除命令

タマホーム株式会社は、新聞折り込みチラシや、06年10月9日から同年12月7日までの間に放送したテレビコマーシャルで、「注文住宅着工棟数2年連続日本一」との広告を行いましたが、実際には営業地域が限定された住宅建築業者の中での第1位にすぎませんでした。要件2(ⅱ)地理的範囲について、事実と異なる表示を行ったため、排除命令がされました。

②令和5年1月12日株式会社バンザンに対する措置命令

 株式会社バンザンは、自社が提供するオンライン個別学習指導に関するサービスの広告に、「オンライン個別学習指導で利用者満足度No.1」「第1位 オンライン家庭教師 利用者満足度」等の表示をしましたが、実際の調査は、回答者が広告されたサービスを利用していたユーザーであるかどうかの確認がされておらず、同社のサービスや他社の同種サービスを実際に利用したユーザーの満足度を、客観的な調査方法で調査したものではありませんでした。要件1の客観的調査が行われていなかったものとして、措置命令がされました。

4.おわりに~『イメージ調査』に注意!

  「No.1表示」は、適切に行えば、事業者、ユーザーともにメリットのある優れた表示方法です。しかし、No.1や第1位などと表記する客観的かつ十分な根拠を持たない表示は、ユーザーに誤認を与えるものであり、許されるものではありません。 

株式会社バンザンに対する措置命令の対象となった「顧客満足度」に関する調査は、実際にサービスを利用したユーザーの他社サービスと比較した「顧客満足度」ではなく、満足度が「高そうな」サービスはどれか、という「イメージ」を問う調査であった、と認定されています。近時の消費者庁の措置命令では、株式会社バンザンのほか、令和4年6月15日の株式会社PMKメディカルラボに対する措置命令においても、豊胸施術および痩身施術の「施術満足度第1位」という表示の根拠となる調査が、会社の「イメージ」を問うだけの調査(しかも回答者の75%が男性)であったことを、客観的な調査とはいえないと認定しています。顧客満足度を測るのにイメージの調査を根拠とするのは、明らかに不適当ですが、他方、「最もイメージのよいサービスはどれか」という調査自体にも、根拠とするに足る客観性は認めにくいかもしれません。イメージ調査という手法には、注意が必要でしょう。

ステルスマーケティングにかかる法規制(ステマ規制)とは?

 2023年10月1日、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)を不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」といいます。)上の「不当表示」とする告示が施行され、ステマ規制が始まりました。今回は、このステマ規制の概要と施行の影響について取り上げます。

1.ステルスマーケティング(ステマ)問題と法規制の背景

 ステルスマーケティング(ステマ)とは、消費者に広告であることを隠して行う販促行為や宣伝行為のことをいいます。いわゆる「やらせ」「サクラ」のことです。

 「やらせ」「サクラ」ということばを知らない人は少ないでしょう。多くの人がこの単語から良い意味を連想しないことからもわかるとおり、ステルスマーケティング(ステマ)は、消費者をだますことを意図した、不当な宣伝行為として非難の対象となっており、2012年に発覚した「ペニーオークション詐欺事件」では、当時人気の芸能人がステマに関与していたことが公となり、活動自粛に追い込まれています。

 SNSの普及に伴い、近年では、広告であることを消費者に隠し、高評価の口コミを装って行う宣伝行為が行われているといわれています。たとえば、次のような行為です。

・広告主が有名な芸能人やブロガー、インフルエンサーに依頼し、広告だと分からないように商品やサービスを紹介させる

・広告主がブロガーや口コミ代行業者に依頼して、または自ら高評価な口コミを投稿する

 広告代理店の中には、広告主の求めに応じ、半ば公然と、上記のようなサービスを提供しているところもあり、いわば「野放し」の状態であることから、法規制を求める声が上がっていました。(消費者庁「ステルスマーケティングに関する検討会報告書」を参照)

 EUやアメリカなどの諸外国では、ステルスマーケティングが違法な行為として法規制されている一方で、日本の法規制は遅れていましたが、今般、景表法の規制対象として「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を指定する旨の告示が施行され、景表法による規制が本格的に実施されることとなりました。

2.規制の内容 

 新告示は、次の①、②のいずれにも該当するものを規制対象としています。

①事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示

 新告示による規制対象となるのは、「事業者」が行う表示です。外形上第三者の表示のように見える口コミやブロガー・インフルエンサーのコメントの内容の決定に、「事業者が関与する」場合は、「事業者」が行う表示とされます。

 消費者庁から公表されている「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」(以下「運用基準」)では、表示内容に「事業者が関与する」例として、次のような場合を例示しています。

✓事業者が第三者に対して当該第三者の SNS 上や口コミサイト上等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合

✓ EC(電子商取引)サイトに出店する事業者が、いわゆるブローカー(レビュー等を SNS 等において募集する者)や自らの商品の購入者に依頼して、購入した商品について、当該 EC サイトのレビューを通じて表示させる場合

✓ 商品又は役務の販売を促進することが必要とされる地位や立場にある者(例えば、販売や開発に係る役員、管理職、担当チームの一員等)が、当該商品又は役務の販売を促進するための表示を行う場合

 一方で、以下の場合は、事業者が表示内容の決定に関与したとはいえない(つまり、ステマにはあたらない)、としています。

✓EC サイトに出店する事業者が自らの商品の購入者に対して当該 EC サイトのレビュー機能による投稿に対する謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合であっても、当該事業者(当該事業者から委託を受けた仲介事業者を含む。)と当該購入者との間で、当該購入者の投稿(表示)内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われておらず、客観的な状況に基づき、当該購入者が自主的な意思により投稿(表示)内容を決定したと認められる投稿(表示)を行う場合

✓第三者が、事業者が SNS 上で行うキャンペーンや懸賞に応募するために、当該第三者の自主的な意思に基づく内容として当該 SNS 等に表示を行う場合

✓事業者が自社のウェブサイトの一部において、第三者が行う表示を利用する場合であっても、当該第三者の表示を恣意的に抽出することなく、また、当該第三者の表示内容に変更を加えることなく、そのまま引用する場合

②一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの

 判別が困難であるかどうかは、「事業者の表示」であることが明確になっているか、第三者(コメントを書いているブロガー等を指します)が自分の意思で書いたコメントであることが明瞭であるか、などから判断されます。運用基準では、次の場合は、明瞭でないと判断され得る、としています。

✓事業者の表示であることが記載されていないもの

✓事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているもの

【不明瞭である例】

(例1)文章の冒頭に「広告」と記載しているにもかかわらず、文中に「これは第三者として感想を記載しています。」と事業者の表示であるかどうかが分かりにくい表示をする場合

(例2)事業者の表示であることを一般消費者が視認しにくい表示の末尾の位置に表示する場合

(例3) 事業者の表示である旨を、文章で表示しているものの、一般消費者が認識しにくいような表示(例えば、長文による表示、周囲の文字の大きさよりも小さい表示、他の文字より薄い色を使用した結果、一般消費者が認識しにくい表示)となる場合

 また、「明瞭な表示」の例として、次の例を挙げています。

(例4)「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言による表示を行う場合

(例5)「A 社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示を行う場合

3.まとめ~ステルスマーケティング(ステマ)と誤解されないための表示のポイント 

 消費者にステルスマーケティングと誤解されないようにするためには、

①その記事が事業者の意図する「広告」や「PR」であること

②その記事を書いた人の自由な判断で書かれたものであること

の、いずれかを明確にすることです。

 そのためには、消費者が十分認識しうる方法で、これは「広告」である、ということを明示することがポイントになります。

 誤解しないでいただきたいのは、例えば、第三者にお金を払って、広告記事を書いてもらうことは、「広告」や「PR」であることを表示さえすれば、何ら問題がない、ということです。

 問題は、その際、その第三者により書かれる記事が、事業者による「広告」や「PR」ではなく、その第三者の客観的評価として書かれているように「装う」ということなのです。

 個人情報の委託先への提供と監督義務

 個人情報取扱事業者は、自らが収集した個人情報(個人情報の保護に関する法律(本稿では、以下、単に「法」といいます。)では「個人データ」と定義されています。)を第三者に提供するには、原則として、本人の同意を取得しなければなりません(法第27条第1項)。

 この原則には、例外(本人の同意が不要な場合)として、次の3類型が定められています(法第27条第1項)。

(1)【委託先への提供】

 個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部  を委託することに伴って当該個人データが提供される場合  

(2)【事業承継による提供】

 合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合  

(3)【共同利用】

 特定の者との間で共同して利用される個人データが当該特定の者に提供される場合であって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的並びに当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名について、あらかじめ本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。

  

 本稿では、上記の例外3類型のうち、「(1)委託先への提供」に該当する場合に、提供元の企業が負う義務について検討します。

1.法第27条5項1項の委託先とは?

 個人情報取扱事業者が、「個人データの取扱いの委託」をする場合の委託先のことをいいます。「個人データの取扱いの委託」とは、契約の形態・種類を問わず、個人情報取扱事業者が他の者に個人データの取扱いを行わせることをいい、具体的には、個人データの入力(本人からの取得を含む。)、編集、分析、出力等の処理を行うことを委託すること等が想定されています。個人情報保護法ガイドライン(通則編)(以下、単に「ガイドライン」といいます。)では、この事例として、次の2つを挙げています(ガイドライン3-4-4  P79)。

①データの打ち込み等、情報処理を委託するために個人データを提供する場合

②百貨店が注文を受けた商品の配送のために、宅配業者に個人データを提供する場合

2.委託先の監督義務

 個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければなりません(法第25条)。

 委託先は、本人に通知した利用目的に沿って行う提供元企業の事業の一部を担うのですから、提供元と一体と考えられています。

 一体と考える、ということは、個人情報を企業に提供した方は、提供先企業と同程度の管理レベルを当然に期待しており、この期待を保護する必要がある、ということです。

 委託先の監督義務を負う、ということは、委託先から漏えい等の事故があった場合の責任を、提供元企業が負うことにほかなりません。

 2014年7月に発覚した、ベネッセコーポレーションの個人情報流出事件は、同社の会員情報の管理を委託していたグループ企業でシステム保守を担当していた派遣社員が、故意にのべ2億3000万件もの個人情報を持ち出し、名簿業者に売却した、というものですが、同社は漏えいが確定した会員への対応(図書券や電子マネーの送付や受講料減額)のため、2015年3月期に260億円の特別損失を計上、翌年度も信頼回復の遅れが影響し、2期連続の赤字決算となり、当時の代表者は、引責辞任をしています。

 委託先管理をおろそかにしてしまったことにより失った信頼を回復することの難しさや、企業業績に与えるインパクトをまざまざと見せつけられた事件でした。

3.「委託先の監督」とは何をすればよいのか?

 ガイドライン(3-4-4委託先の監督)では、『個人情報取扱事業者が個人データの取扱の全部または一部を委託する場合は、自らが講ずべき安全管理措置と同等の措置が講じられるよう、監督を行うものとする。』とされています。

 また、『その際、取扱いを委託する個人データの内容を踏まえ、個人データが漏えい等をした場合に本人が被る権利利益の侵害の大きさを考慮し、委託する事業の規模及び性質、個人データの取扱状況(取り扱う個人データの性質及び量を含む。)等に起因するリスクに応じて、次の(1)から(3)までに掲げる必要かつ適切な措置を講じなければならない』、としています。

(1)適切な委託先の選定

 委託先の選定に当たっては、委託先の安全管理措置が、委託元に求められるものと同等以上であることを確認するため、ガイドラインの「(別添)講ずべき安全管理措置の内容」に定める各項目が、委託する業務内容に沿って、確実に実施されることについて、あらかじめ確認しなければなりません。つまり、次項の委託契約の締結前に確認をする必要があります。

(2)委託契約の締結

 委託契約には、当該個人データの取扱いに関する、必要かつ適切な安全管理措置として、委託元、委託先双方が同意した内容とともに、委託先における委託された個人データの取扱状況を委託元が合理的に把握することを盛り込むことが望ましい、とされています。

(3)委託先における個人データ取扱状況の把握

 委託先における委託された個人データの取扱状況を把握するためには、定期的に監査を行う等により、委託契約で盛り込んだ内容の実施の程度を調査した上で、委託の内容等の見直しを検討することを含め、適切に評価することが望ましい、とされています。

 以上から、「委託先の監督」とは、次の①から③を実施することであると考えられます。

①委託先の選定段階(委託契約の締結前)で、委託先が自社と同等レベル以上の安全管理措置を行っていることを確認すること

②双方合意・確認した、講ずべき安全管理措置の内容と、委託元がその管理状況を把握することとを規定した委託契約を締結すること。

③定期的な監査等により、モニタリングと見直しを行うこと。

4.「委託先の監督」の実務対応

 では、実際に「委託先の監督」は、どのように実施すればよいのでしょうか?

 ガイドライン(3-4-4委託先の監督)では、『取扱いを委託する個人データの内容を踏まえ、個人データが漏えい等をした場合に本人が被る権利利益の侵害の大きさを考慮し、委託する事業の規模及び性質、個人データの取扱状況(取り扱う個人データの性質及び量を含む。)等に起因するリスクに応じて、必要かつ適切な措置を講じなければならない。』と書かれているのみで、対応の「範囲」や「深さ」について、具体的な手法を明示していません。つまり、ガイドラインでは、何を行えば「委託先の監督」という要求を充足するのか、判然としません。

 多くの企業が、ここに悩みを抱えているかもしれませんが、ガイドライン(3-4-4委託先の監督)が上記記述と併せて示す、以下の『必要かつ適切な監督を行っていない事例』は、何をもってこの要求を充足するのかを考えるうえで、示唆を与えるものと思われます。 

『必要かつ適切な監督を行っていない事例』

事例 1)個人データの安全管理措置の状況を契約締結時及びそれ以後も適宜把握せず外部の事業者に委託した結果、委託先が個人データを漏えいした場合

事例 2)個人データの取扱いに関して必要な安全管理措置の内容を委託先に指示しなかった結果、委託先が個人データを漏えいした場合

事例 3)再委託の条件に関する指示を委託先に行わず、かつ委託先の個人データの取扱状況の確認を怠り、委託先が個人データの処理を再委託した結果、当該再委託先が個人データを漏えいした場合

事例 4)契約の中に、委託元は委託先による再委託の実施状況を把握することが盛り込まれているにもかかわらず、委託先に対して再委託に関する報告を求めるなどの必要な措置を行わず、委託元の認知しない再委託が行われた結果、当該再委託先が個人データを漏えいした場合 

 ここで示された事例から考えると、以下のようなことが管理のポイントになりそうです。

ポイント1)委託先における個人データの安全管理措置の状況を契約締結時及び以後継続的に把握

ポイント2)必要な安全管理措置を委託先に指示すること

ポイント3)再委託に関する条件の指示と再委託の実施状況の把握

 以上から、「委託先の管理」の仕組み(態勢)として、以下の3ステップが考えられます。

 なお、ここで示す態勢は、あくまで一例であり、この仕組みを回せば、「委託先の管理」の要求を充足するとは限りません。充足するかどうかは、事案ごとにリスクを評価し、必要な対策を講じているかどうかから判断されるべきものですので、ご注意ください。(法令解釈や運用の法的妥当性に関しては、専門の弁護士にご相談ください。)

適切な委託先の選定 ~ ステップ1

 委託契約の締結に先立って、あらかじめ用意したガイドライン「10((別添)講ずべき安全管理措置の内容)」に定める各項目を記載したチェックシートに委託先がチェックを入れることで、安全管理措置を講じる旨を表明保証させるとともに、措置の具体的な内容について説明を受けます。この際、措置として不十分な点があれば改善を指示します。

委託契約の締結 ~ ステップ2

 委託契約において、(1)で確認した「講ずべき安全管理措置」について合意し、一定期間経過ごとにモニタリングを実施すること、モニタリングにより発見された安全管理措置上の問題点に関し、委託先に対し必要な指示ができること、及び再委託の条件等を規定します。

委託先における個人データ取扱状況の把握 ~ ステップ3

 委託から1年経過ごとに、チェックシートの記入や面談により、委託先の個人データの取扱い状況を把握します。不適切な管理が認められれば、是正を指示します。

 当事務所では、委託先への個人情報の提供に必要な体制の構築(業務フローの整備)、安全管理措置に関するチェックシートの作成、委託契約の標準パターンの作成などの支援をハンズオンで受託しております。以下の「お問合せ」から、お気軽にご相談をお寄せください。

    時効の援用

    「いつ借りたのか覚えていないような借金の請求が、しかも全然知らない会社からいきなり来て、どうしていいかわかりません。これって、払わなければいけないのでしょうか?」

    このようなご相談を、しばしば頂戴します。よくよくお話を伺うと、請求しているのは、カード会社などから債権を買い取った債権回収会社。身に覚えがないのは当然です。

    本当は、「債権譲渡」とか、「社名変更」とか、何らかの「通知」が来ていることがほとんどなので、ご本人が注意していなかった、ということだとは思うのですが、次のようなケースもありました。

    「『あなたの債務残高は、●●円です。』という残高証明書と、『会社分割と社名変更により返済金の振込口座が変更されました。』という2通の通知だけ送られてきて、問い合わせの電話をしても、何も教えてもらえないんです。20年くらい前に、カードキャッシングを利用していたことは覚えていますが、いつ、どこからいくら借りたかは、全く覚えていないし、全部ちゃんと返済していたと思っていたんですが…」

    こうなると、本当に困ってしまいますね。

    この方は、ちょっと知恵を使って、時効を援用する旨の内容証明郵便を作成し、これを送信したところ、その後一切請求はなくなりました。

    債権回収会社の方は、合理的な判断をしますから、時効が認められるとわかれば、もうそれ以上回収行為はしないのです。

    身に覚えがない、はっきり覚えていない、請求書も残っていない、という場合は、まず、時効が援用できないか、考えてみるのがよいでしょう。

    1.消滅時効って何?

     消滅時効とは、ある事実状態が一定の期間継続した場合に、法律関係の安定を図るため、その事実状態を尊重して権利の消滅を認める、という制度です。「権利の上に眠る者を保護しない」とか、「年月の経過により証拠が散逸し、立証が困難になることを救済するため」などということも制度目的として、挙げられています。

     2020年4月1日に改正民法が施行され、債権の消滅時効期間は、「権利を行使できることを知った時から5年または権利を行使することができるときから10年」となりました。ただし、施行日より前にその債権またはその債権発生の原因となる法律行為が発生していた場合(例:売買契約を施行日前に締結し代金の弁済期が施行日)は、改正前民法が適用になるなど、時効期間の算定は、注意が必要です。

    2.消滅時効を主張するためには「時効の援用」が必要です
     
    消滅時効は、当事者が援用しないと、裁判所はこれによって裁判をすることはできません(民法145条)。つまり、債務者は、時効の効果を発生させるためには、時効が完成したことを主張することが必要になります。これを「時効の援用」と呼んでいます。
     
    通常、「時効の援用」は、通知内容を後日証明することができるようにするため、内容証明郵便によって行います。また、この際、「郵便物など届いていない」という反論を受けないように、配達証明を付すことが、一般的です。
     
    当事務所では、配達証明付き内容証明郵便の発信を代行しております。以下の「お問合せ」から、お気軽にご相談をお寄せください。

      建設業許可の専任技術者要件緩和

      1.令和5年7月1日施行の新ルール

      (1)実務経験による技術者資格要件の見直し

      建設業許可を取得するためには、いくつかのハードルがあり、その中の1つとして専任技術者の要件を満たした者がいることが挙げられます。

      国土交通省から「施工技術検定規則及び建設業法施工規則の一部を改正する省令」の公布が行われ、技術者制度が見直され、専任技術者の要件が緩和されました。

      (2)改正のポイント

      現在、実務経験により専任技術者資格の要件を満たすためには、

      ①大学、短大等の指定学科卒業後3年の実務経験を有する者

      ②高等学校の指定学科卒業後5年の実務経験を有する者

      ③それ以外で10年の実務経験を有する者

      について一般建設業許可の営業所専任技術者要件を満たすこととされています。

      改正後は、

      ④1級1次合格者を大学指定学科卒業者と同等とし、合格後3年の実務経験を有する者

      ⑤2級1次合格者を高校指定学科卒業者と同等とし、合格後5年の実務経験を有する者

      が上記に加わりました。

      (3)注意点

      今回の要件緩和は、指定建設業(土木一式工事、建築一式工事、管工事、鋼構造物工事、舗装工事、電気工事、造園工事)と電気通信工事は除外されています。

      また、試験の合格後の実務経験について認められる改正なので、例えば、実務経験3年を有する者が、1級1次検定に合格したからといって、すぐに専任技術者の要件を満たすことにならないことに注意が必要です(試験に合格後3年間の実務経験が必要になります)。

      2.改正の背景と今後の展望

      (1)改正の背景について

      建設業においては、1999年度末の約60万業者をピークに減少し、2022年度末には約47万業者まで減少しました(国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について」より)。

      入職者についても、国土交通省の発表では、直近15年で35%の減少しており、将来にわたる中長期的な担い手の確保・育成を図ることが課題となっています。

      今回の改正は、そのような建設業の担い手の人材不足という深刻な課題への対策という背景があります。

      (2)今後の展望

      現状において、資格取得や10年の実務経験とその証明に苦戦する建設業者が、専任技術者の要件緩和により、新規許可の取得や許可の継続も可能となるケースが出てくることが考えられます。

      特に、機械器具設置工事業については、監理技術者、技術士、指定学科卒業と卒業後の実務経験3年または5年、10年の実務経験を有する者しか専任技術者になることができなかったものが、建築・電気・管工事施工管理技士が機械器具設置工事業の指定学科卒業と同等とみなされることにより、合格後3年(1級)または5年(2級)の実務経験に短縮されるため、この課題を解決できるケースも出てくると考えられます。

      3.最後に

      建設業は、毎日の生活に必要な住宅や店舗、電気・ガス・水道設備といった水道光熱施設、人の移動に欠かせない道路や鉄道、防災に関連する堤防やダム等々、社会生活の基盤となる諸施設の整備を担う重要な産業です。

      改正の背景でも述べたように、現在、建設業においては、深刻な人手不足があり、許可要件を緩和していくことは、深刻な人手不足に一石を投じることになります。

      その目的においては、今回の改正での効果は限定的であるとも考えられます。

      実務経験が3年ある者が1級1次検定に合格したとしても、合格後さらに3年の実務経験を積む必要があり即効性に欠けることや、働きながら資格取得の勉強をする意欲のある従業員は、実務経験の3年や5年を待たずに、建設業許可を取得できるための資格を取得するとの声が現場にはあり、有用性が疑問視されています。

      それでもなお、国土交通省が建設業界の深刻な人手不足に対策を講じていくことは、建設業の現場にとって望ましいことであり、一定の評価ができるものであると考えます。建設業の健全な発展を促進していくためにも、この改正で満足するのではなく、今回の改正を入口として、2歩3歩踏み込んだ政策に期待したいところです。

      当事務所では、建設業の新規許可取得や変更届等のご相談を承っております。

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